絵の練習に「デッサン」は必要か?

絵の練習のために「デッサン」やった方がいいですか?
独学で絵を勉強している方が悩んでいる所をよく目にします。

ここでのデッサンというのは、絵を描く対象(モチーフ)を自分の目の前に用意して、
構図を決めて、鉛筆などで形、色、光と影、質感とかを描いていくやつですね。

よく言われるいわゆる「デッサン」が、絵の練習に必要かどうかについて
私なりの考えを解説しようと思います。

デッサンの練習は必要ない

結論として、絵の練習にいわゆる「デッサン」は、必要ないです。

正確には、「ちゃんと目的を理解してやる」なら価値があると思います。
ただ、「人に言われたから」とか「周りがやっているから」なら必要ありません

ここでのデッサンとは何を指すか?

皆さんが想像するであろうあのデッサンをする目的をざっくりまとめると
観察のトレーニング」にあります。

そのモチーフ自体の形、
複数のものを置いていたらそれらの位置関係、
光がどこからきて、どのくらい光を反射して、影がどう落ちているか、
硬いものか柔らかいものか、
そういったモチーフが持つ要素を、絵を見た人にどう伝えたらいいか、
構図を自分で設定して描いていくものです。
(デッサンの目的、パターンは他にもありますが、膨大すぎるのでここでは割愛します)

なぜデッサンの練習が必要ないのか?

極めることに時間がかかりすぎる

ここまで聞くと、「1枚のデッサンで絵の基礎が総合的に学べるの?!めっちゃいいじゃん!」と思うかもしれません。
ただ、それらの基礎すべてを理解して、実際に自分の作品で表現できるようになるまでには
膨大な時間と枚数が必要になります。

デッサンが完璧にできるようになってから作品を作る!
と意気込む方も見かけます。
ですが、それでは作品に至る前の膨大な練習だけで一生を終えることになってしまうと思います。
そのくらいデッサンは広くて深く、追求するときりがないものです…。
過去の偉大な画家たちも、自分の作品を作りながら生涯勉強を続けていました。

実制作のほうがためになる

すでに描きたい絵が明確な場合、
自分にとって必要なことは、実制作のなかで十分に学べます
そのため、わざわざデッサンという形で絵の勉強をする必要がないのです。
デッサンを目的としたデッサンをするくらいなら、
その時間を作品制作に充てたほうがいいと私は思います。

ゲームでいうチュートリアルを延々やっているのと、
いきなり友達とバトルしながら操作方法を学んでいくみたいな感じかもしれません。
…違うかもしれません。

また、デフォルメチックな絵を描く人だったら、
デッサンで培ったスキルが実制作に結びつかない…なんてこともしばしばあります。
それなら写実的な絵をデッサンという形で練習するよりも、
自分の学びたいことと密接に関わる勉強の時間にあてたほうがよさそうだと感じないでしょうか?

先駆者はデッサンをやっていない(ひともいる)

3Dアーティストである片桐裕司さん、森田悠揮さんにお話を伺う機会があったのですが、
お二人ともいわゆるデッサンは数えるほどしかしたことがないそうです。
立体物を制作される方々なので、絵を描くのとは少し視点が違うかもしれませんが、
観察することの本質は同じかと思います。

デッサンの経験が乏しくともかっこよく形がとれるのは、
自身にとって必要なことを考えながらものを見、実際に作品を手掛け、
その中で反省と成長を繰り返して…と経験を積んできたからです。

この「考えながら」ものを見るというのがミソです。
考えて物を見るというのはどういうことかについては
また改めてまとめたいと思います。

このお二方以外でイラストを描いて生活している方でも、
デッサンを本格的に勉強したり描いたことがないという方はよく見かけます。

これだけで絵を描くことにデッサンは必須ではないということは感じられると思います。

デッサンが必要なパターン

例外として、
「美術模試でデッサンコンクールとかしてるじゃん!」
「美大受験はデッサンの試験があるじゃん!」
「デザイナーのポートフォリオにデッサンが載ってることあるじゃん!」
など
デッサンできないとだめなんじゃないの?と思う場面があります。

デッサンは歴史の中である程度ノウハウが構築されているものです。
そのため、「私は基礎をどのくらい知っています」「表現できます」ということが一目瞭然になります。
また同じ受験者との比較が分かりやすいこともあり、デッサンという形態がよく用いられるということかなと思います。
そういう場合は郷に従ってちゃんとデッサンに取り組むのが吉かなと思います。

ぶっちゃけ、完全なる無駄にはならない

余談ですが、
私はあまり目的や意味を考えることなく、
指示されるまま3年ほどデッサンを続けていたことがあります。
それでも数をこなせばそれなりに上手になれました。
長時間一つのものに取り組む忍耐力と集中力が養われたのは大きかったなと思います。
観察して手を動かす経験は無駄にはなりません
(ちゃんと1枚1枚頭を使って描いていれば、もっと成長が早かっただろうな…という後悔もあります)

まとめ

結論としては、
デッサンを通して得られるもの、それをやることの意味を理解して、必要だと思ったらやればいいと思います。
人に言われたり、漠然と不安だからでしぶしぶやるだけなら必要ありません

注意してほしいのが、
だからってデッサンに懸命に取り組んでいる人がダサいとかはありません
デッサンしていない人がダサいということもありません
その人にとって今デッサンが必要だからやっているだけだし、
今は必要ないからやっていないというただそれだけなのです!

どんなことでも回り回って自分の血肉になるというのは事実なので、
とにかく手を動かしていきましょう!

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